気虚と肝うつの違いとは?



疲れているように感じている患者さんをみて、この症状が、気虚によるものなのか、肝うつによるものなのか。
その見立てによって、処方する漢方薬も全然違ってきます。

そもそも、気虚と肝うつでは体内で何がどう違うのでしょうか。

これは、倉庫からデパートまで敷かれた線路の上を、貨物列車が荷物を運んでいることをイメージするとわかりやすいと思います。

つまり、荷物(気)がたくさん積まれている貨物列車があるにもかかわらず、線路(気の流れ)の不具合で列車が停まっていてデパートまで届かないのか(肝うつ)、線路には全く問題がなく、貨物列車に荷物がないからデパートまで何も届かないのか(気虚)。

荷物(気)を積んだ長い貨物列車が、線路(気の流れ)に問題があって停まっている場合(気は十分にある)、線路を修復せずに、強い気をどんどん補充していったら、倉庫にも線路にも荷物があふれ、さらに別の病気をも引き起こしてしまいますね。

では、気虚なのか肝うつなのか、あなたは何をもって判別するでしょうか。

この続きは次回お話します。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

中医薬発展 座談会



5月30日(土)、世界中医薬学会連合会主催の「中医薬発展 座談会」にお招きいただきました。

座談会には、日本で国際中医師試験の開催権利を有する各団体の責任者が一堂に集まり、中医学発展の為に意見を交換し、友好を深めました。

この様な座談会は初めて開催され、中医学発展の目的を共にする皆様とおめにかかることができ、大変有意義に過ごしました。


世界中医薬学会連合会 陳副事務局長から、中医学の発展と国際中医師の権威を高める為に、国際中医師試験の統一開催に向けて提案がありました。

このことは参加者の多くが賛同し、ますます、今後の発展が楽しみになりました。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

「疲れ」に効く漢方は?



「患者さんが『最近どうも疲れる』と訴えたら、補中益気湯ですよね?」とよく聞かれますが、これ、ちょっと違います。

なぜ違うのか、中医学、漢方では「基本のき」ですが、皆さんはわかりますか?

「疲れている」なら、気力が足りないんだから気を高めよう、と考えるのは、気持ちはわかりますが、実はとても安易で危険です。
患者さんによっては補中益気湯や人参などは使えない場合があります。

補中益気湯や人参を用いることで、かえって悪化させてしまうことも大いにあるのです!そんなことになったら大変ですよね。

でも現実にはその危険性を放置したまま使われていることも多々あります。
同じような症状を訴えたとしても、原因や病気の流れ等によって使う薬は全く違います。

これを「同病異治」といいます。

そもそも、「疲れ」とはどういう症状なのか。
そこからきちんとわかっていないと、疲れだという判断もできないのですが、仮に、強い倦怠感があったり、なかなか毎日のけだるさが抜けない、というような主訴があったとします。

その原因としては、「気が足りない(気虚)」というもののほかに、「気の流れがよくない(肝うつ)」ということも大いに考えられるのです。

これだけではありませんが、大きくこの2つがあります。
さて、どちらなのでしょう?

この続きは次回にお話します。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

国際中医師試験



今年度の国際中医師試験が5月30・31日に実施されます。

中医学を学ぶ者にとって一つの大きな目標ではないでしょうか。

受験には、臨学習、方剤知識、臨床について習得基準が設けられていますが、当アカデミーの課程修了者はその受験資格を得られます。

毎年日本からは100人前後の人が挑戦しています。

「勉強して中医学の知識が身に付いていれば特に資格なんていらない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、資格は世界中医薬学連合会が中医学の専門家として認める証であり、取得はこれからも大きな信用につながります。

せっかく勉強しているのですから、是非挑戦してほしいと思います。

国際中医師試験情報
http://www.iatcm.com/doctor_exam.html

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

国際中医師試験のポイント



5月30日(土)、31日(日)は、国際中医師試験開催日です。

試験は、5教科6科目。

一科目あたりの選択問題の出題数は100問と多いため、準備をしっかり整えておく必要がありますが、最大の難関は、弁証論治中医カルテ作成の筆記試験です。

この弁証論治試験では、多くの参加者が緊張のあまり、頭が真っ白になり、ふだんは書ける方剤名や中薬名が書けなくなる場合があります。

一度、頭が真っ白になると、前後、隣の席から聞こえる鉛筆の音が気になり、更に思考力が散漫なり、諦めモードになりがちです。

そんな負のスパイラルに落ち込まないために、試験開催日が間近に迫りましたので受験者の皆様に、「弁証論治試験・カルテ作成の注意点」と題し、胸痺の症例を基に、カルテ作成の流れと診断の手順などをご案内しました。

類似する病証との鑑別要点として、こんな症状があれば、胸痺と診断します、とか、この脈象が見られれば、証候名の判断ポイントになります、などなど。

しっかり復習し、診断する上で大切な症状を覚えておけば、ちょっとのことでは慌てずにすみます。これまでの努力は裏切りません。

アカデミーのハードな学習カリキュラムを修了されているのですから、落ち着いて問題に取り組んで下さい。皆さんの良い結果を待ちたいと思います。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

【練習問題の挑戦 シリーズ1 中医内科】

国際中医師アカデミーでは、「治せる力」を身につけて頂くことを学習の目標のひとつに挙げています。

テキストを読み練習問題を解くことで、吸収した内容を更にアウトプットすることで複雑な臨床に対応できるようになって頂きたいと考えています。
アカデミーの問題やその解釈を少しご紹介しますので、興味のある方はチャレンジしてください。


今回は、中医内科学に関する穴埋め問題を紹介します。
設問文の途中に抜けている個所を埋めて下さい。

① 苔薄黄膩・脈濡数は感冒の(   )証の症状に属する。

<解答>
濡脈は浮で細くて軟らかく、虚証と湿証の場合に見られる脈象です。
濡脈が数脈と一緒に表れた場合、感冒の暑湿証の特徴に属します。
従って、正解は「暑湿」です。
暑湿証の感冒の治療方剤は新加香薷飲(しんかこうじゅいん)です。

新加香薷飲の配合特徴は辛温解表袪湿の香薷と辛涼解暑解毒の連翹・金銀花を併用している点にあります。

この問題を通じて「苔薄黄膩・脈濡数」は感冒の暑湿証を反映する特徴の一つとして覚えていきましょう。
また日本では新加香薷飲のエキス剤を手に入れることができなませんが、中薬学、方剤学の学習を深めることで他の方剤で代用することが可能になります。

Posted in 過去問題解説 | Leave a comment

【乳房の良性腫瘍の治療】の続き

2月27日のfacebookで【乳房の良性腫瘍の治療】を紹介しましたが、引き続きその後の経過をご紹介します。

この方の治療原則は、補肝腎、疏肝活血袪痰の方法で処方し、煎じ薬を2ヶ月飲みました。

◎服用開始約二週間後:体が軽い、ため息が軽減、乳房の脹痛が消失。
◎服用開始約四週間後:鼠径部と乳房の腫瘍が軟らかく感じ、圧痛が軽減する。

現在の状態は、当初訴えていた症状が殆ど消失し、鼠径部と乳房の腫瘍が小さくなり、本人は非常に嬉しく思っています。

良性腫瘍の中医治療では虚実の鑑別が非常に重要で、その中で実邪の種類、虚弱の臓器、虚と実の鑑別ではどの症状が主となるかなどを判断する必要があります。


このような病状への正確な判断は、中医基礎理論をきちんと勉強した上に、中医診断学、中医内科学をマスターする必要があります。
正確な弁証ができても、中薬と方剤学を深く理解しなければ、処方を効果的に組む事はできません。


一人の患者への効果的な治療を提供するには大変な作業があります。
問診の目的は、病名と証候の判断で、中薬の配合目的は病理状態を治療する事です。

これら一連の作業は、「経験」だけで対応できるものではないと考えています。


治療

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

【弁証論治試験対策講座 動画配信】

国際中医師試験の試験科目である弁証論治対策講座の配信が始まりました。


弁証論治試験は、症例からの情報を分析して、病名と証候の診断を行い、
治療方法と代表処方を書き出す等の作業を時間内に完成させる筆記試験
で治療までのプロセスを明確にするものです。


配点の割合では、「病名診断」がかなりの比重を占め、次いで「証候診断
と「代表方剤名」の順に重要さを占めています。

これらの3つの項目が正しく記載できるかが合格の大きな「鍵」となりま
す。


臨床における弁証論治でも同様に、まず病名診断に誤りがあれば、その後
の治療方法が異なるため50%以上の誤診に繋がります。


また病名が正しく診断できたとしても証候名に誤りがあれば30%以上の
誤診の割合が追加されてしまいます。

つまり、病名と証候の診断は弁証論治の生命線といっても過言ではありま
せん。弁証論治の試験科目は、「臨床力」を示す試験であると考えられま
す。

これら病名と証候名の判断の力と方剤の運用力を、さらに育成するために
診断に必要となる要点を解説した動画の配信を始めました。

動画配信によって、遠方からお越し頂くことなく、また時間の制約もなく
視聴して頂けるようになりました

講義内容は、受験参加を希望されている方以外にも中医内科学の学習に進まれて
いる方にも参考になる内容です。
この講義によって過去に勉強した内容を
復習しながら、中医知識をアウトプットできるようになるよう期待できま
す。


弁証論治は、患者とのコミュニケーションの中で問診に不足はなかったか、
正しく治療できたか、或は治療の途中で問題点がなかったかを知る上でも
重要な「あしあと」を残すことになります。

問診で尋ねる内容には必ず意味があり、ただ闇雲に頭の上から足の先まで
問診するのは、中医臨床では「力」不足です。


弁証論治

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

雪の中、冷えた足を守る

記録的な大雪に見舞われ、足元が気になります。

雪の中、スニーカーなどで歩き濡れたまま放置すると
「寒湿」という邪気が足元から入り体に大きな影響を及ぼします。

「寒気」と「湿気」は、肝脈と腎脈に沿って肝腎に侵入すると
男性では、男性器が縮まりインポテンツを引き起こしかねません。
また女性では、月経痛、冷え症、不妊症の引き起こします。

足元が濡れて冷たくなったら、
生姜と黒砂糖を数分煮込んだ者を飲みながら足湯につかります

足湯をすることで軽く発汗させて体内から寒湿を追い払います。

家に帰ったら早速試してください。


2014年2月8日大雪 

Posted in ブログ, 漢方薬 | Leave a comment

中医学を学ぶ「中医学の原則」 頭痛の虚実判断

頭痛の診断要点で先ず診断しなければならないのは、「外感」と「内傷」ですが、
外感と内傷の鑑別によって同時に「虚」と「実」の区別がはっきりさせられます。
この手順を無視して、目的を持たずにあれこれ問診をしても分析に必要な情報をしっかり得られたかどうかは疑問になります。

外感頭痛を除く実証の頭痛は、主に肝火上炎や瘀血が関係し、虚証では、気虚、陰虚が関係します。

例えば頭痛が非常に強く、痛みがなかなか止まないのは実証の特徴です。
肝火上炎では怒りっぽい、口中が苦い、興奮しやすい、感情的な影響で頭痛が激しくなります。
瘀血による頭痛は、夜間に頭痛が強くなる、舌に瘀斑がある等の特徴があります。

虚証の頭痛は、疲れた時に頭痛が生じますが、それほど痛みが酷くならいのが特徴です。

気虚の頭痛は、疲れが顕著で、呼吸が荒っぽい、何もしないのに冷たい汗が良く出る等の特徴があります。

陰虚の頭痛は、火照り、寝汗、夜に体調が崩れやすい等の特徴があります。

そして頭痛の発痛部位によって痛みや治療も異なります。
患者を目の前にして頭痛の治療薬を選択する場合、自分自身の頭の中で、以上の概念と知識を持ちながら問診に生かすことが、効果的な治療に結びつきます。

Posted in オンライン学習方法, ブログ | Leave a comment