冷え症2 上熱下寒

一般では冷え症を治療する際、温めればよいと思い込む場合が多々あります。
前回、ご紹介した「上熱下寒」の冷えを治療する場合、温めるだけでは肺心の熱が更に強くなり、咳、胸悶、不眠、口渇などの症状をひき起こしたり、悪化させることもあり、冷えはますます酷くなります。中医学では、上熱を冷まし、下寒を温める代表方剤に「交泰丸」があります。交泰丸の構成生薬は肉桂と黄連で、肉桂と黄連の配合率は10:1です。当然、寒熱の具合により、その配合率を変える必要もあります。「冷え」だからといって安易に八味地黄丸(金匱腎気丸)などを選ばないよう 、しっかり問診の上判断してください。

Posted in 漢方薬 | Leave a comment

冷え症を考える

先日のテレビ朝日で、北里大学東洋医学総合研究所の先生が「暖めたからといって冷えが改善するとは限らない」と話し、特集では冷えに潜む病気を検証していました。わかりやすい説明で、その中で「上熱下寒」という「冷え症」が印象に残りました。
上半身の体温が高く、下半身の体温が低い方が紹介されこのようなタイプの人は、中医学で「上熱下寒」と言い、「心」に熱があり「腎」に寒があるという複雑な状態を反映しています。
治療原則は、心の熱を冷まし腎を温めますが、このような病証の弁証論治には、誤りを犯すことがありますので注意が必要です。

Posted in 漢方薬 | Leave a comment

婦人科・小児科・外科の参考資料を配布しました。

アカデミーの卒業試験であり、国際中医師標準試験の受験資格にもなる「中医臨床総合課程試験」に合格された皆様に、練習問題と参考資料を発行しました。
練習問題は、国際中医師標準試験の受験科目である中医内科学で、婦人科、小児科、外科に関する問題が出題されますので、試験対策となるよう過去の問題を中心に復習して頂くと同時に採点ページには解説を加えました。
参考資料は、婦人科と小児科に関する出題傾向の高い内容について中医薬大学テキスト第5版と世界中医薬学会連合会のテキストの中から抜粋し説明を加えました。またテキストに含まれていない方剤も多い為、各方剤と構成生薬の一覧をご覧頂ける資料です。
いずれの教科も日本語資料がないのが現状ですが、学習意欲の高い受講者の皆様に満足して頂ければと思います。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

漢方薬と処方箋

漢方薬を処方調剤で服用できるのは、患者側にとっても費用の負担が少なくなるので良いことだと思いますが、問題点もあります。
漢方薬を処方調剤で服用する場合、ほとんどの方が煎じ薬ではなく、一包ずつエキス顆粒の形態で服用しますが、本来であれば病気の状態に合わせて方剤の加減を加えてもらいたいと感じます。寒熱虚実を無視して、この症状にはこの漢方薬という出し方は、無責任な行動と思います。
医師に資格が必要なように、中医学の理論を学び弁証論治による治療が行える「力」を養わなければ結果的に病気で苦しむ方を悩ませることになります。
漢方を用いる判断は、西洋医学の理論ではなく、中医学の理論からであるべきです
患者の病を治すための漢方薬を処方するならは、中医学の弁証論治の原則に従っていただきたいです。

Posted in 中医学アカデミー, 中西医結合 | Leave a comment

胃癌の術後に六君子湯?

知人が胃がんの手術を受けました。幸いなことに開腹せず腹腔鏡手術でしたので、思いのほか早く退院ができたそうです。退院の前に先生から、「六君子湯(りっくんしとう)」を処方されたそうです。先生の説明によると六君子湯は腸の状態をよく整えるから飲むように言われたそうです。
しかし、手術後の病理特徴は、主に虚実混雑の状態が多く見られます。この場合の虚は、気虚、血虚、
陰虚、陽虚で、実は主に瘀血があります。
六君子湯の効能は「脾胃止嘔」、脾胃気虚で痰湿を兼ねるものに用いる方剤で、痰湿を除去する特徴がありますが、陰虚、血虚には相応しくありません。
知人の状態を確認せず、腸を調えるために六君子湯を飲みなさいというのは、危険な行為です
処方を出す前に、病因病理の判断をして適切に用いて欲しいと強く願います。

Posted in 中医学アカデミー, 漢方薬 | Leave a comment

十全大補湯と気血両虚

十数年以来の中医教育では、色々な思い出がありますが、日本では漢方薬に対して「効能」を重視し、本来の弁証論治という中医治療のあり方が無視されがちです。
例えば、気血両虚の患者に「十全大補湯」を使用したものの効果が得られず、どうしたらよいかと質問される場合があります。
日本で流通している十全大補湯の効能は、主に「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血」を改善するとあります。
気血両虚は気虚と血虚の症状が確認しなければなりませんが、効能書きのような「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血」だけでは、それを正しく判断することは難しいと感じます。気血両虚を治療する代表方剤は、十全大補湯と八珍湯ですが、いずれにしても弁証を間違ったが、処方を間違えば、思ったような効果は得られないでしょう。

中医学のプロの世界では、気血両虚に対して、気虚と血虚を招いた原因や各臓腑間の関係、或いは気虚と血虚との関係などいくつかの方向から考える必要があります。
十全大補湯或いは八珍湯はいずれ気血両虚の結果に対する治療処方です。気血両虚の原因を治療する処方は、弁証の結果次第です。このような「原因」を見出す能力を身に着けるために、先ず中医学の専門用語、概念を深く理解する必要があると考えています。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

修了証書を順次送付しています

 今週までに国際中医師アカデミーに数人が卒業試験に見事に合格しました。修了証書を順次送付しています。
 卒業試験である「中医臨床総合課程試験」に合格された方々には、国際中医師標準試験の婦人科・小児科・外科の練習問題を発行し学習していただきます。
 国際中医師は、中医学の勉強の終点ではなく、中医臨床の入り口に立つための過程の一つです

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

夜泣きと漢方薬

夜泣きは、赤ちゃんや幼児が、夜間睡眠中に目を覚まし激しく泣き、なかなか泣き止まないことを指しますが、乳幼児が誰でも夜泣きを起こすかと言えば、そうでもなく、夜泣きに悩まされる親もいれば、全くそんな経験もない親もいます。
中医小児科では、夜泣きはひとつの病証として扱っており、診断方法と治療方法には規則があります。
中医学の治療は全てにおいて「診断」が重要となり、正しい診断の基で適切な漢方薬を選択し服用しなければ効力を得ることはできません。
中医小児科では夜泣きを「夜啼」といい、虚寒のタイプ・心熱のタイプなどに分けられ、更に腎虚などとも関連します。夜泣きに甘麦大棗湯や抑肝散、小建中湯などと漢方薬の名前で紹介されていますが、病因病理から考えれば、これらの漢方薬では効果が得られないと思います。必ず診断の規則に従い病因病理の特徴を掴んで適切な判断のもとで、漢方薬の選択とその加減をしてほしいものです。

Posted in 中医学アカデミー, 漢方症例, 漢方薬 | Leave a comment

国際中医師アカデミーのHPをリニューアルしました!

国際中医師アカデミーのホームページをリニューアルしました。
何度か、サイト内の情報が探しにくいとのご意見を頂いておりましたので、ホームページにお越し頂いた方が必要とする情報を見つけやすいよう、思い切ってページを変更しました。
私達は、アカデミーの活動を通して中医学に精通する「プロ」の育成の第一歩になるよう、そして学習して頂いた中医学が多くの病に悩む方々に役立てて頂けることを願って運営しております。
中医学のプロは、まさしく漢方薬を的確に運用できる人材のことです。少なくとも漢方薬を扱うプロになるには、少なくとも二つの要素があると考えています。
ひとつは、本人の患者の病証を直す情熱、もうひとつは中医学の概念を正しく理解して中医学の知識などを身につけた上で、中医学の思考方法で病気の性質、部位、程度などを正確に診断し相応しい治療を行う能力を養い活用することです。

頼もしいことに現在参加されている方々の学習意欲は極めて高く、日々の学習履歴を拝見する度に、心の中でエールを送っています。

Posted in 中医学アカデミー | Leave a comment

景気が良くなったように見えます?

経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体のトップが、7日午後に都内のホテルで開催されたパーティに参加されました。
2013年の景気について、安倍内閣に対して期待が大きいということです。
中医学からみると、安倍内閣への期待感は「心気」の働きのようなものです。
心気は心の拍動する力とリズムを維持し、拍動の規律と拍数を調和するので、心気が充実していれば心の機能や心拍数、脈拍などが正常に維持され、それによって血は脈中を正常に循環し、絶えることなく全身を滋潤し、各臓腑や器官に栄養を運ぶことができます。
「心気」が強くなければ、「心神」が不安になり(心神不安)、他の各臓腑や器官も元気が出なくなります。
心気を強くするために、精神だけではなく、心気に精気血(栄養のようなもの)を送らなければならないですね。

Posted in ブログ | Leave a comment