方剤学を学ぶ受講者からの質問をご紹介します。
<質問内容>
斂肺止咳薬の勉強で、九仙散を学びました。
肺陰が損なわれ、咳が止まらないときに使うとありますが、これは咳嗽でいうところの肺陰虧耗にも使えますか?
<回答>
九仙散は、斂肺止咳剤に属す方剤で、肺の気陰両虚による肺気不降と肺気不守(肺気の発散が過剰です)の病証を治療する方剤です。
例えば、慢性咳喘・多汗・慢性気管支炎などが肺気陰両虚による肺気不降と肺気不守の病理に属せば用いることができます。
配合の特徴は、収斂固渋を主な効能とする肺虚久咳に用いられる烏梅・罌粟殻が配合されています。
一方、咳嗽の肺陰虧耗では、軽宣潤燥剤に属する沙参麦冬湯が代表方剤です。
軽宣潤燥剤は、外感涼燥或は温燥を治療する方剤を指し、沙参麦冬湯は、清養肺胃・生津潤燥の効能があり、燥邪が肺胃の陰液を損なう病証の治療に優れています。
ご質問の肺陰虧耗による咳嗽の治療に九仙散が用いてもよいかですが、咳嗽は六淫の感受から始まり内傷咳嗽に発展した病証で、肺陰虧耗の場合は、午後の潮熱・頬紅・五心煩熱・夜寐盗汗・舌質紅・少苔・脈細数など陰虚内熱の徴候が見られるのが特徴です。
九仙散は、肺の気陰両虚による肺気不降と肺気不守の病証を治療する方剤であるものの陰液を滋養し、生津潤燥に働く補陰薬の配合はありませんので、肺陰虧耗の場合には適切とは言い難いです。
しかし、肺の気陰が共に耗散した場合(気陰両補)の慢性咳嗽を治療する場合には、補陰では効果が得られないことがあります。
この場合は、収斂に働く九仙散などを利用すべきです。
一般的な慢性咳嗽の治療で症状の改善が見られない場合は、収斂の方剤も考慮してください。
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