中医学には陰陽五行説を基礎とした中医基礎理論というものがあり、この理論は、一人ひとりの体質や病気の状態を判断するのにたいへん優れています。
この理論に則って、中医学の大きな特徴の一つである「証」=患者さんの病態を判断します。
証の中で、実証、虚証という言葉を聞いたことがありますね。
実証と虚証の意味は、「体力がある」「体力が充実」「体力がない」とは全く違う概念です。
この判別が中医学と日本漢方では少し違います。
中医学では、虚証とは、人体に必要な物質(気血など)や機能が不足した状態を指します。
実証とは、病気の反応が激しく、体が病気に対抗する機能がまだ衰えていない状態を指します。
中医学では体の「虚証」や「実証」という病理状態を知るのに望診、問診、聞診、脈診を行い、気、血、津液、肺、脾、腎などそれぞれに虚の証があるかないかを確認していきます。
一方、ある漢方の説明書に「体力がない人で〇○の症状」、「体力が充実している人で▲▲の症状」という記載があった場合、これをもし、体力がない=虚証? 体力がある=実証? と理解してしまうと、大変危険です。
たとえば、大柄で筋肉質で肌もつやつやしている人が、「だるくて具合が悪い、よく風邪をひく」と相談に来たとします。その外見から中医学の「実証」と判断して治療法を決め、漢方薬を処方したら、どうなるでしょう?
だした漢方薬が効かないならまだしも、病気を悪化させてしまうこともあるのです。