前回、天国に届ける紙銭(ツーツェン)の話をしましたが、中国では死後の世界のことを、実際は天国とは言わず、「陰間(インジェン)」と言います。
一方、人間が生きている間にいる世界を「陽間(ヤンジェン)と言います。
中国では、あの世・この世も陰・陽なのです。
陽間には(陽)気があり、そこに住む人間の心の中には神(シン)が存在し、神に宿る気や血液を滋養して動かすことで人は動けるわけです。
そして陰陽のバランスをとることで人間は生きています。
一方、亡くなった方の住む世界・陰間には陽気がまったくありません。
ですから陰間では人間の体は動きませんが、魂は存在する世界であると考えられています。
さて、人が死んだということを、中医学では「陰陽離決」(インヨウリケツ)とも言います。
魂が陽を離れていくイメージでしょうか。
陰陽離決の原因には、
「陰盛格陽」(インセイカクヨウ・陰が強くて陽を追い出す)と
「陽盛格陰」(ヨウセイカクイン・陽が強くて陰を追い出す)の二つがあります。
いずれにしても、この陰陽離決の前に、実際はいろいろな状態・病態があるわけで、西洋医学では「(副作用もしくは末期症状だから)仕方ない」とされる部分でも、中医学ではそれぞれの症状に応じた救命方法があり、延命だけでなく治療の可能性があるものもたくさんあるのです。
ですから「中西医結合」は非常に可能性のある医療方法と思うのですが、もったいないことに、中国でも現代は中医学の妙技を最大限に活かすよりも西洋医学に偏りつつあります。
もっとポイントポイントで漢方の救命方法を使えれば、末期症状での対処法や蘇生の可能性も高いのではないかと思っています。
漢方の救命方法、つまりその弁証論治や処方の最大の目的は、陰陽のバランスをとることにあります。
「健康でない」ことも陰陽不均衡が原因ですが、「危篤状態=死にかけている」ということは、体内のあらゆる部分で陰陽のバランスが崩れている状態といえます。
そして同じ危篤状態でも、陰盛格陽と陽盛格陰では、臨床特徴や治療方法もまったく違ってきますからご注意を。
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