慢性胆嚢炎の患者の症例を紹介いたします。
最初の漢方相談薬局を訪問した際、
「食欲低下、疲れやすい、軟便、脂っぽい食事で下痢になりやすく、
時々胃痛や腹痛が生じる」という症状で
六君子湯が処方され数か月服用したそうです。
しかし、効いているのかどうかわからないまま、
怒ったり、いらいらすると脇腹が張るようになり、
次第に痛みが生じるようになり、
その旨を伝えたところ六君子湯を継続して服用するよう勧められたそうです。
ところが健康診断で「胆嚢炎」であることがわかったそうです。
六君子湯は胆嚢炎に効かない理由について
最初の症状では、「脾虚」と考え六君子湯の服用を考えるのは、
良し悪しは別にして一般的な判断だと思います。
しかし、食欲低下、腹脹、下利などの症状は脾胃だけではなく
胆汁の排泄障害とも関与します。
すなわち、胆汁の排泄障害により、脾胃の運化機能にも影響を及ぼすことを
考えなかった点は注目していただきたいです。
脾胃と胆汁との関係に関する理論が秘訣なものではなく、
中医基礎理論に記載されている「簡単」なような理論です。
最初の段階で「脾虚」だけに捕らわれるのではなく、
脾虚と同時に他の原因を考え、どんな時に腹痛や胃痛、腹腸が起きるのか、
また感情の起伏についてなどの肝胆に関する適切な問診や未病に対する
配慮があれば、症状は悪化することなく適切な治療ができたはずです。
この症例から中医学の理論を勉強し続く必要があると考えています。