前回馬雲氏についてお話ししましたが、彼には非常に感動したので、その話をもう少し続けます。
時代の寵児のような成功者・馬雲も、何度も大きな失敗をしました。
まず、アリババが成功して資金ができると、さらなる発展のために優秀な人材集めに乗り出し、苦い経験をします。
中国では本土の大学の博士を「土博士」、海外の大学の博士を「洋博士」と呼ぶのですが、彼は、洋博士、つまり海外の大学で博士号を持つ教授や、ハーバード大学など欧米の有名大学のMBA保持者を大変な高給で募集したのです。
実際、たくさんの有資格者が馬雲の会社に入ってきたわけですが、しばらくすると皆去ってしまいました。残って支えているのは土博士ばかり。
ハーバード大卒やMBA保持者がアリババに来た理由は、「高給」であることと、「自分の知識、ノウハウを活かして自己実現したい」ということであり、必ずしもアリババを発展させることではなかったのです。
この教訓から馬雲氏は、大金を払って安易に能力のある人を引き抜いてくるのではなく、アリババを発展させるための優秀な人材を、大金を使って育てる方針に変えたといいます。
人材育成も経営手腕の一つかもしれませんが、馬雲氏も試行錯誤しているようです。
他にも、調子に乗ってアメリカに進出したところ、倒産寸前まで追い込まれ、中国に戻って再出発を余儀なくされた時期もありました。
アジアで一番の成功者でも、何度もどん底を味わっているのだと思うと、勇気が湧いてきますね。
その都度、改善して挑戦し直す不屈の精神にも頭が下がります。
ちなみに中国には、「過喜生悲(カキセイヒ・喜びが過ぎると悲しみが生じる)」という言葉があります。
事象としては、成功して有頂天になっていると、そのうち悲しいことが起きるということですが、これは中医学の心肺の関係でも理解できます。
五行説では、燃える火が強すぎると、金に属する肺をやっつけてしまうのです。
喜び過ぎると、心臓つまり心の気に宿る神の気が発散し過ぎて思考が的確でなくなりますし、悲しい気持ちが過ぎると、肺の気を消耗し肺気虚が現れます。
いずれにしても、嬉しいときには、まだ十分でないことを思い出して気持ちを抑えたほうがいい。日本の「勝って兜の緒を締めよ」ですね。
馬雲氏も、その後は商売繁盛でも手を広げ過ぎないようにしているようです。
もしかしたら中医学の理論を取り入れているのかもしれませんね(笑)。
漢方の勉強は「国際中医師アカデミー」